技術士とは何か?

私は企業に30年間在籍していた当時、技術者としては比較的資格を多く持っていた方だと思います。といっても取り組み始めたのは45歳を過ぎるころからです。それまでは必要性も有効性も感じていませんでした。会社にもよるのでしょうが、私の前職で技術士、MBA/MOT、博士といった重めの(^^;)資格をひとつでも持っている人はほとんどいませんでした。技術者が2000人を超えるなかで、技術士は私一人だったのです。

有資格者しかできない業務がある弁理士や弁護士、会計士などを業務独占資格と呼ぶのに対応して、技術士や中小企業診断士は名称独占資格と呼ばれ、無資格者との差異は「相応の能力を持っている」と国家が認定していることだけです。

技術士がいることで公共事業の応札時に有利になるために、建設部門などでは業務独占ではないものの、多くの技術者が受験しますが、機械、電気、化学といったその他部門は、次のような目的で、技術者が受験するようです。

(1)技術者としての力試し
(2)独立コンサルタントとしての実力認証
(3)退職後の名刺肩書

現在技術士の英語訳は”Professional Engineer”です。2000年までは”Consulting Engineer”でしたが、技術士の8割以上が会社員や公務員という現実に合わせて解消されたものですから、必ずしも(2)のように独立する予定がなくても資格取得を目指すことは全く問題ありません。

 

技術者は技術士資格を取るべきか?

では技術者たるもの一体技術士資格を取るべきなんでしょうか?それは当然その技術者が何を目指しているかによります。

ただ食べるため、家族を養うために技術者という「職業」についているのであれば、苦労して資格を取得してもその労力にふさわしい見返りは必ずしも得られません。自分のケースでいえば、一次試験の準備に費やした時間は150時間、二次試験に350時間、総監受験に200時間といったところです。時給2000円なら合計140万円?(笑)報奨金も出なければ、給料も上がりませんでした。大赤字です。

それでも私は次の理由で、技術士資格取得を多くの技術者に勧めます。

(1)自己研鑽の習慣

技術士を目指すまでの自分は、居合流というか、必要最低限の知識は勉強するものの、それ以上に自分の能力を高める勉強はしませんでした。多くの技術者がそうではないかと思います。

技術士試験は当然何が出題されるか分からないので、必然的に網羅的な学習を強いられます。おかげで、それまで全く知らなかった分野の知識を獲得することができて非常に新鮮でした。実はこの時にまとめた内容は、のちに大学の非常勤講師をやることになった時、大いに役立ちました。受験対策の資料とそこで得られた知識がなかったら、私は講師を引き受けることができなかったでしょう。

また3年間毎日退社後に勉強していたことが習慣となり、合格後も勉強せざるを得ない観念が身につきました。その延長でMOT、博士課程に繋がっていったのです。知識だけでは成果が出ませんが、技術者として周りの人より知識があればそれだけ優位に立てることも事実です。

(2)技術士会の人的ネットワーク

技術士登録すると技術部会や専門部会などから多様なイベントの案内が届きます。地方であれば地方本部や県支部のイベントもあり、また技術士同士だけでなく業界団体や研究会との接点も増えて、社外技術者との交流が一気に増えます。企業内技術士である限り、その効用も限定的ですが、いずれ退職したあとはこれらの人脈が大いに役立つこととなります。

できれば学会や技術士会の委員か幹事を一つくらい引き受けて、ボランティア的に活動しておきましょう。私が技術士資格を取得したのは退職1年前でしたから、在職中はさほどネットワーキングできませんでした。もっと早くから交流を深めておけば良かったと思っています。

社内だけでも非常に多忙で、さらに家庭でも父親の役割もある中で、技術士受験の勉強に時間を割くことが容易ではないかもしれませんが、なんとか時間を捻出して挑戦してほしいものです。

技術士資格を取るべきではない技術者

そうは言っても、技術士に挑戦すべきではない(挑戦できない)技術者もいます。それは技術者ではありながらも、管理者から経営者へのステップを先頭で上っている人です。技術士はどちらかというと独力での技術能力を評価されます。管理職、経営者は、組織としての成果を求められるため、必ずしも技術力そのものを求められません。そういった人は技術士の受験勉強が役にたたないリスクが高まります。どちらかといえばMOT(技術経営)の勉強の方が、役に立つ可能性が高いでしょう。

もちろん経営者になっても時間的余裕がある技術者は受験しても構いませんし、そのような能力のある方ほど、力を入れれば合格の確率は高いとも予想されます。

参考になれば嬉しいです。