博士とは、技術者の中でも研究者が持つべき資格といえます。

技術は、研究-開発-設計-生産-製造と進むわけですから、研究はエンジニアリングチェーンの中で最上流に位置することになります。各ステップに博士はいますが、圧倒的に研究職に多いでしょう。

最近日本の博士取得者が減っているという記事が目を引きました。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO53006550V01C19A2MM8000/?fbclid=IwAR0gtiUP2Voum27Nhnm_4RlciFLiEDJCN7J21Uh-n8iAR8O9z5hqSZIvNKU

他国では博士を取ることで、研究組織だけでなく、一般企業でも重用され、報酬も上がるのに対し、多くの日本企業では博士資格が評価されないために、学生も博士課程に進もうとしないのです。

正に自分が博士後期課程に進学した2013年の東京工業大学においても、自分の所属する研究室の博士課程の院生は私以外韓国とスリランカから来た留学生のみで、日本人はいませんでした。損得を考えると、3年間で200万円をかけて取得する価値は見出しにくいのです。場合によっては、博士取得者は専門が狭くてつぶしが利かず、企業で使いにくいとさえ思われるリスクがあります。

しかし一旦学部か修士卒で企業に就職した人間が、仕事をしながら学位を取得する場合は異なる評価が可能です。まず研究中も仕事をしていますから、学位取得後の就職の心配がありません。また通常仕事の内容を博士研究のテーマとしますので、時間の無駄がほとんどありません。家族と過ごしたり、遊んだりする時間は一時期犠牲になりますが、修士の延長で博士課程に進むのに比べると、精神的ストレスは大幅に緩和されます。

また指導教官との相談ではあるものの、比較的自由にテーマ設定することができ、私の認識している限りでは社会人の方が、教授会の判定も甘い傾向があるようです。

とはいえ、思い付きで取れる資格ではありませんから、周到に準備しましょう。もし将来的に学位を取る気持ちが少しでもあるなら、テーマに関連する最低一つの学会に所属します。そして自分の仕事テーマに一区切りついたタイミングで、可能であれば論文投稿しておきます。また研究テーマに親和性のある先生とは仲良くしておき、なにか機会があるときに、博士論文が書けるか聞いてみます。査読付き論文が3~5本以上あるならば、運が良いと論文博士となれる可能性があります。そうでなくても1-2年の課程に入学して博士論文をまとめる機会がもらえる可能性があります。

ただし大学院により、博士論文執筆開始へのハードルは大きく異なります。一般には著名な学校ほどハードルは高く、何とか入学許可をもらってもゴールできません。お金と時間の無駄になってしまいます。先生と事前に十分話し合うのは当然のこと、在学生、OBなどの経験談も収集しておいた方が良いでしょう。

そして前述のように、学位を取得しても給与が上がらず、昇進もしない企業が多数です。学会で座長を頼まれたり、専門誌の記事執筆を依頼されたりすることが、多少自尊心をくすぐる程度です。もし仕事で海外の技術者と交流する場合は、一目を置かれるでしょう。

またすぐに昇進につながらなくても、課長、部長、事業部長と進むにつれ、他の条件が全く同じであれば、資格のある人が

結論として、企業内技術者が何が何でも取りに行く資格ではないと思いますが、研究所在席の場合など、論文投稿の機会があるのであれば、活かしておく方が良いでしょう。

自分の場合、まさに思い付きで博士課程に進み、仕事をしながらそれをテーマに論文を執筆し、還暦になる前月に学位をいただいたのですが、「これでもう取るべき資格は制覇した」とほっとした気分になりました。子供たちも独立して比較的時間が自由になる良い時期だったかもしれません。

もやもやしているのなら準備の上で挑戦してみても良いでしょう。