企業内の技術者教育に関する書籍を探していたら、「企業内学習入門」という本が見つかり、早速購入してみました。
国際競争力ランキングで有名なスイスのビジネススクールIMDのシュロモ・ベンハー教授の専門分野は、まさに企業内学習。この280ページ定価2700円(税別)の正統派ハードカバーがAmazonマーケットプレイスで送料込み524円で買えたのは感激モノです。

本書の構成は、企業内学習の手順そのものです。
まずは第1章で企業内学習戦略を考える。これは当然企業、事業の戦略と整合していなくてはいけません。「どう教育するか」の前に「何を教育すべきか」が決まっている必要があります。

第2章と3章でラーニング・ソリューションを選択、開発する。旧来の教育はオンジョブであれ、オフジョブであれ人から人へ直接伝えるものが大半でした。参考書を読むとか通信教育もありましたが、補助的な手段でした。十数年前にeラーニングが注目されましたが、IT環境が不十分で今一つ効果が評価されませんでした。しかしここ数年インターネット上の動画配信技術が急激に発達して、これを使うことで有効で安価な教育ツールが実用段階にきています。使うか否かの選択ではなく、「どう使うか」の時代といえます。

第4章では、学習する内容に対するリソース(講師)を考える。うまい講師が手近にいれば良いですが、必ずしもそんなに都合よく見つかりません。ここは外部の力もうまく使いたいところ。そうすることでIT利用がますます有効になります。

第5章で企業内学習の効果を評価する。(1)反応、(2)学習、(3)行動、(4)結果それぞれの段階で評価するというカートパトリックのモデルにそって議論され、受講後のアンケートは良く使われますが、「理解できた」と「効果的に使えた」は同等ではありません。いくつかの評価方法が提案されます。

第6章は企業内教育の位置づけを高めるためのブランディング。教育体系を構築しても、企業内での位置づけが低ければ、多忙な日常業務の後回しとなり、効果的なタイミングで教育が実施できません。また学習は、多分にメンタルな作業であり、意欲側面からの体制作りも重要です。

第7章では、企業内教育の組織体制を考える。教育で真に効果を発揮するためには、長期的な運用が不可欠であり、それには体系を組織化しておくことが不可欠です。教育委員会を効果的に機能させるための注意点が提示されます。

これら企業内教育の7つの要素が、バラバラではなく調和を取りながら粛々と実行されていくことで、組織は強くなります。さして斬新な提案はないものの、海外の研究者は実に体系化が上手です。技術者教育体系を考える上で、関係者は一読の価値があります。