本年6月に発行された令和初のものづくり白書第1部第2章は、製造業が抱える最近の課題を扱い、第1節は現状認識です。

図211-2の日銀短観・業況判断DIの推移をみると、ここ5年ほど全体的に世の中は好景気と見られているようです。ただし大企業が先行して、中小企業はそれを追いかける構図です。

図211_2 日銀短観業況判断DIの推移

別の資料で増益になった企業の要因は「好況」「販路開拓」が多く、減益の要因は「人件費上昇」「資源価格の上昇」「調達価格の上昇」となっており、好況の波に乗れた企業と好況によるコスト上昇で打撃を受けた企業に二分されるようです。

好況によって設備投資も増えてはいるのですが、需要は国内より中国を始めとするアジア各国の方が伸長しており、投資先は海外が多くなっています。

図211-23で完全失業率、有効求人倍率という雇用環境の動向を見ると、好況の継続に伴い失業率が減少し求人倍率が上昇しています。ここでは、景気だけでなく少子高齢化も影響しているはずです。15歳から64歳までの生産年齢人口が毎年70万人も減っていくわけですから、定年退職者を新入社員ですべて補充できるはずがありません。

図211_23 雇用環境(完全失業率、有効求人倍率)の動向

図212-2で日本貿易収支の推移を見ると、輸送機械の貿易黒字はじわじわと増加していますが、鉱物性燃料すなわち原油や天然ガスなどのエネルギーが大きく増減し、日本の収支に大きく影響していることが分かります。使用量がそんなに急激に増減するはずがなく、この変動のほとんどが原料価格の上下で引き起こされています。特に原発が全て停止した2011年以降、輸入量が増えた以上に価格が上昇しており、エネルギー供給が不安な日本の足元を見るビジネスは日本感覚と合いませんが、受け入れざるを得なかったものでしょう。

図212-2 日本貿易収支の推移

もう一つこの間の電子機器貿易黒字の減少は甚大です。2000年には輸送機械と並ぶ黒字を獲得していたものが近年は見る影もありません。すり合わせのアナログな技術の多い自動車に比べると、半導体に技術が内包されるデジタルな電子機器は、新興国でも設計、製造がしやすい点で日本の良さが出しずらいためです。

しかし図212-26のようにスマホの出荷台数は世界でも明らかに頭打ちで、電子工業界を拡大するにはスマホに代わる牽引役が必要なようです。

         図212-26 スマホの世界出荷台数

この後2017年10月以降の各種品質問題に関する記述が続くのですが、大きな問題ですので講を改めます。