技術者キャリアプランの重要性

2020年3月8日エンジニアのキャリアデザイン

自分の40年にわたる技術者人生を振り返ってみると、なかなか思った通りにいかないものだという感慨があります。その「想定外」は必ずしも悪い方向だけでなく、良い意味での想定外もありました。しかし「どうせ思ったようにいかないのだから、計画を立てない」という考えは正しくありません。計画しないので行きあたりばったりでは、うまくいっているのか、ダメなのかの判断すらつかないからです。ダメならダメで、どこがどれくらいダメなのかが分からないと対策が決まりません。

まずは大きな計画をたてて、それに沿った小さなマイルストーンを設定し、やってみて合わないようなら修正する。それを何度も繰り返して、技術者として、人間としてのリスクに備え、大きな目標に近づくべく、都度の適切な判断を下す努力が大切です。

技術者の理想的キャリアを10歳刻みで分けると、ざっと次のようなところでしょうか。

  1. 20代:基礎的な専門知識と、仕事の進め方を習得
  2. 30代:チームリーダーとして事業計画に沿った技術テーマを設定し、チームをけん引する
  3. 40代:組織長として自ら事業テーマを設定、運営し、企業に利益をもたらす。
  4. 50代:経営幹部として技術戦略を設定し、将来的な成長路線を検討、準備するとともに、後進を指導する。
  5. 60代:自分の技術、考え方を社外にも展開すると同時に、後進に継承する

もちろん同じく製造企業に技術者として入社したとしても、30代以降の進路は様々です。生涯エンジニアを貫く人、管理職としてチームのアウトプットを高める人、そして色々な理由で会社から離れ自分の事業を創る人もいます。岐路に至る事情も千差万別ですし、本人の能力、希望も違いますから、どれかが正解というものではなく、その時点での最適な選択の積み重ねが現在の状態です。計画は大事ですが、状況は刻々と変わりますから計画に縛られてもいけないのです。

キャリアを考えようとする前に皆さんにお勧めするのは、自分の幸せの定義を今時点で設定することです。専門技術を極めて社外での評価も高く、社内で出世して高額報酬をもらい、家庭も大事にして健康で趣味も楽しむ。それができれば理想ではありますが、残念ながらすべての人は等しく限られた時間しか与えられていません。何かを犠牲にしなければいけない局面が必ずやってきます。やるべきことを選ぶのではなく、やらないことを決めるのは本当に難しいものですが、自分が最も幸福を感じる時を思い起こし、あまりぶれないように優先順位を決定する必要があるのです。

幸せを感じる時も年代とともに変わってきます。自分も若い頃は、趣味に没頭しているときが一番楽しかったのですが、技術士の受験準備を始めてからは、新たな知識との出会いが楽しくなり。現在はその知識や人脈を若者や他の人に教えて役立つことに生きがいを感じるようになりました。どれが正しいというものではありません。自分に正直で良いと思いますが、一般論で言えば他の人から感謝される時に、最も幸福感が高まると言われます。

先ほど1-5で示したような画にかいたようなキャリアを進む技術者はほんの一握りです。多くの人は意図せず、場合によっては自ら意図してそれとは違う道をたどります。それが自分の幸せの定義と合っていれば問題ないのですが、どうしても合わない場合はその会社から出ざるを得ないこともあるでしょう。転職、独立は、その決定が大きな意味を持ちます。その際はそこまでの経験、習得した知識を活かせる進路を選ぶべきでしょう。隣の芝生は青くきれいに見えるものですが、見た目の良い進路はそれを目指す人も多いものです。

自分のキャリア戦略を考えるに当たり、事業戦略策定ツールである「クロスSWOT分析」を自分個人に対して使ってみるのもお勧めです。自分の強み、弱みをできるだけ客観的に評価し、進もうとしている分野の機会と脅威に照らし合わせて、個人の進むべき方向、活動内容を設定するのです。これによって全く新たな戦略が出てこなかったとしても、今これをやるべき理由など、いくつかの発見があるはずです。

さあ初めの一歩を踏み出してみましょう。

技術者キャリアに関する講演抄録

2019年11月10日エンジニアのキャリアデザイン

昨日は久しぶりに仙台の母校で応用物理学科の同窓会に参加しました。
実は同窓会副会長を受けていたりしますが、忙しさを口実にほとんどそれらしい活動はできてませんでした。
今回講演講師公募ということでしたので、ものづくりドットコム認知度向上を兼ねて、講師に応募し、運良くお話する機会を得たものです。
ターゲットは企業内技術者やや若手としましたので、このブログの読者と完全に重なるため、こちらにも公開しておきたいと思います。ただし私のキャリアは工学部卒業生としてかなり傍流ですから、企業内技術者としては「こんな人もいる」程度に聞いておいてください。

結論は次の3つを挙げました。
1.人生思ったようにはいかない。思いもよらない不幸もあれば、奇跡のような幸運もおとずれる
2.想定外を楽しむ心の余裕がほしい
3.「人事を尽くして天命を待つ」行動しない人に幸運の女神はやってこない

私のキャリアを端的に表現するために、下記の人生グラフを表示しました。

私の人生グラフ

自分は比較的クールな性格なので、あまり感情の起伏は大きくないのですが、それでも気分が高揚する時もあるし、落ち込む時もあります。

ここ数か月は懸案だったM&Aが一段落し、同窓会でもお話しできる結構ハイな気分というわけです。しかしこのあとどんな事件が起こるかすべて予見することは不可能です。

そこで最後は次のようにまとめました。
1.人生何が起きるか分からないので、とにかく汎用的な能力を身につけておく。自己投資を厭わない。リターンが最大の投資は、自分の能力向上。
2.もし起業したらひたすら行動することで、幸運が舞い込む(かもしれない)

それとは別に、若い人向けに贈る言葉も用意したのですが、あまり若い聴講者がいなかったのでトバしてしまいました。折角書いたのでここに残しておきます。

1.必ずしも起業が良いわけではない。順調にキャリアが積めるなら大企業の方が大きな仕事ができる場合も多い
2.技術者は基本的に技術(ロジック)が好きだが、起業すると人間関係(非ロジック)の重要性が増す
3.そうはいっても不測の事態(リストラとか、上司との確執とか)へは備える必要あり
4.資格取得はないより合った方が良いものの、過度な期待は禁物
5.技術士会、学会、研究会、勉強会などを利用して社外ネットワークを広げておく
6.転職かコンサルか起業かは、経験と年代、環境、性格で変わる
7.いずれにせよ重要なものは、人のつながり、行動力、自分への投資

どうでしょうか?
またどこかで項目ごとに議論を展開していきたいと思います。

米国の「製造業ルネサンス」の実態(2013年度版 第1章第2節コラム)

2013年6月29日ものづくり白書を読み解く

2013年度版ものづくり白書第1章第2節のコラムは、
米国の「製造業ルネサンス」の実態を解説しています。

下の図で分かるように、
中国の労働者賃金の上昇によって
米中の人件費格差は縮小し、
輸送費や管理のしやすさを考慮すれば
今や米国内の製造に競争力がありそうに思えます。

●アメリカ製造業回帰に注目が集まる背景
アメリカ製造業回帰に注目が集まる背景【技術者のキャリア設計】エンジニア・技術者・専門家・ものづくり・製造業・経営論・人材確保・キャリアアップ・キャリア形成・ものづくり.com

しかし白書では、海外拠点を米国に戻す動きが
キャタピラーやGEなど限定的であり、
もっと大規模な新規雇用が必要だと分析しています。

その原因として考えられるのは、
まず第一に、もはや中国生産はコストダウンが目的ではなく
中国そのものの巨大市場が目的であること。
第二に、近年の中国内生産量同大による習熟曲線により
中国の現場力が米国を上回っている事です。

これは他人ごとではなく、
日本も製造の現場を失って長い時間が経つと
復帰できなくなる危険性があります。

タイ洪水の際に、
タイ工場から作業者を連れてきて生産せざるを得なかった
ホンダの例が思い起こされます。

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TPPなどの経済連携を活用した立地環境の改善(2013年度版 第1章第2節コラム)

2013年6月27日ものづくり白書を読み解く

2013年度版ものづくり白書第1章第2節のコラムでは、
TPP周辺の環境と重要性が書かれています。

ご存知のように、本件では賛否両論が行き交っていますが、
この白書は経産省なので、完全に賛成の論調です。

一般的に新しいことを始める時は、
賛成が多くとも、既得権者が死に物狂いで反対するため
そちらがメディアに取り上げられ、
あたかも賛否相半ばのように見えたりします。
賛成者は死に物狂いになりにくいため、
ニュースの「絵」にならないのです。

しかも反対している人は、農業従事者よりも
その利権の恩恵を受けている人だったりします。

いずれ中国の食文化が豊かになり、農作物が不足し
日本などからの輸入に頼らざるを得なくなるという話も聞きます。

保護に頼るのではなく、自らの知恵を使って
農業の付加価値生産性向上を今から進め、
来たるべき農業輸出時代に備えるべきでしょう。

製造業で培った生産性向上の手法も
間違いなく利用できるはずです。
いや、利用しなければなりません。
ものづくり革新ナビを農業関係者も見て欲しいな。

TPPをそのための契機として利用してほしいものです。
もちろんソフトランディングのための施策は必須です。

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主要国・地域における製造業の競争力比較(2013年度版 第1章第2節1 その2)

2013年6月26日ものづくり白書を読み解く

2013年度版ものづくり白書第1章第2節1(2) では、
主要国・地域における製造業の競争力を比較しています。

競争力の構成要素を6つに分類し、
先進国と比較したチャートが図121-4であり、
アジア諸国と比較したものが図121-5です。

●図121-4 主要国の製造業競争力チャート(欧米)
主要国の製造業競争力チャート【技術者のキャリア設計】エンジニア・技術者・専門家・ものづくり・製造業・経営論・人材確保・キャリアアップ・キャリア形成・ものづくり.com

●図121-5 主要国の製造業競争力チャート(アジア)
主要国・地域の製造業競争力チャート【技術者のキャリア設計】エンジニア・技術者・専門家・ものづくり・製造業・経営論・人材確保・キャリアアップ・キャリア形成・ものづくり.com

これを見ると日本の特徴が非常に際立っています。

①産業基盤は、欧米だけでなく
アジアのシンガポール、台湾に比べても大きく劣っています。
これは電力料金の高さと
イノベ^ーションを促進する法制の不十分が原因のようです。

②産業集積は、全体のトップであり、
よく言われる質量ともに優れた中小企業の存在が原因です。

③技術力は色々言われる中、ダントツの高水準です。
環境も法制も経営も劣る条件で、よくできたものです。

④経営力の低さは情けないものです。
白書では、市場への対応力(つまりマーケティング)と
MBAスクールの質の低さ、産学連携の評価が原因とあります。
いずれも思い当るところ大ですね。
文科省の管轄でしょうか。

⑤労働力も決して高くありません。
労使関係は良いものの、
生産性に対する賃金の高さ、
生産年齢比率の低さなどが劣っています。

⑥グローバル化指標は、これら10か国中最下位です!
半端に大きい国内市場、海に囲まれた地形
心地よい環境に甘んじて
対外的な消極感が数値に現れています。

日本の競争力を上げるには、高い技術力を維持しつつ、
グローバルな考えを持った経営者がいれば良いようです。
そう考えると、日産やユニクロ、日本電産など
海外進出に積極的な経営者の率いる企業は元気があります。

大きな企業であれば、
必ずそのような素養を持った人材がいるように思いますが、
なかなか抜擢が難しいのか。
海外から連れてくる方が抵抗感がないかもしれません。

ちなみにこれらのデータは、
良く見かけるIMDだけでなく
色々なソースから引用されています。
手間がかかってますね。

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