書籍「10年後生き残る 理系の条件」竹内健著を読んで

2020年1月23日エンジニアのキャリアデザイン

「技術者」×「キャリア」でGoogle検索したところ、本書が検索順位第1位で表示されたため興味を持って購入してみました。

著者の竹内健氏は大学卒業後、フラッシュメモリーを発明した舛岡富士夫氏との仕事を志願して東芝に入社しましたが、実用化は苦難を極め20年の歳月を要しました。そしてようやく大規模な投資で東芝の稼ぎ頭になるという、まさにその絶頂期に東芝を退社し、大学教授に転身しました。

それまでの経緯から、大きな成果を上げても正当な評価が期待できずに、また狭い専門領域に留まることで事業が縮小した時のリスクを感じて、たまたま話があった大学研究職への転身を決意したのです。

本書はそんな著者が後進のエンジニアに送る、経験的な技術者キャリア論です。

全体を通じ、「近年の技術は変化が激しく、会社員キャリアを通じて一つの専門で通せることはない」という前提があります。私の企業時代30年を振り返っても、入社後20年は中身が変われど「光ディスク」という大きな括りで仕事していましたが、最後の5年はプラズマディスプレイを扱い、それも最後は消滅してしまいました。このような比較的製品ライフサイクルが長い時代にあってすら、成果を上げるには専門領域を極める必要があり、狭めるとその技術終焉と共に技術者キャリアが終わってしまうリスクが高まるという二律背反の状況に追い込まれます。

そこで筆者は第1章で、企業が要求する狭い専門性を深めると同時に、その応用や経営などを横方向に展開する、いわゆるT字型のスキル構築を勧めます。
ただし学生から入社初期にまずは専門領域を深め、その後で横方向に広げるという順番が大事とも説きます。歳を重ねてから専門を深めることが容易ではないからです。

専門分野で袋小路に追い詰められない方策として、筆者は第3章で技術者であっても「文系力」を身に付けようと語ります。ここでの文系力とは、経営力であったり、発信力、自己分析だったりします。技術力を磨くのは当たり前で、その上で前述のようにT字展開するわけです。筆者は実際に30代でスタンフォード大学に企業留学してMBAを取得し、企業研究の傍らで学会に論文を投稿して40前にして学位を取得しています。

これらの点では私も遅まきながら55歳でMOT、59歳にして学位を取りましたから、ちょっと似ているところがあります。いずれも良かったと思う反面、その効果を長く享受するためには、もう少し早く取っておけば良かったと思うものです。

後半の第5章で筆者は「エンジニア人生は逆張りでいこう」と提起します。これは会社の言いなりになっていることが、必ずしも良いキャリアを約束しないことを意味します。新しいことを始める時の次の三つのルールを紹介していて興味を引きます。

  1. 新たに挑戦したい分野の先駆者などに、広く聞いて回る
  2. やることを決めたら、周囲の人に宣言する
  3. チャンスが来たら、全力でやり遂げる

私もこれらをどこかで聞いたためか、起業志願者には近いことを次のように話しています。

  1. どうしたら良いか分からない時は、自分が尊敬している、あるいは理想に近い人と会って話してみる。
  2. あるものが欲しい、こうなりたいと思ったら、書いたり、人に話したりしていると、いつか実現する。
  3. チャンスは後で気づいても間に合わないので、早めに捕まえにいく。

企業内技術者は、考えなくても仕事が指示されるため、ある意味で楽です。そのため、自立して何をどうするか自由に決められる状況で、的確な判断をする訓練ができていません。いつ企業から離れても独力で判断できるように、30/40代から意識的に行動しておくことが、キャリアリスク防止に有効です。

本書には、他にも技術者が自らのキャリアを振り返り、将来を考えるためのヒントが満載です。企業内で専門技術習得に邁進し、ふと現状に疑問を感じた迷えるエンジニアさんに一読をおススメします。

デジタル化とコモディティ化(2013年度版 第1章第3節1(2,3))

2013年8月22日ものづくり白書を読み解く

2013年度版ものづくり白書第1章第3節1(2,3)では
デジタル化に伴う製品のコモディティ化が解説されています。

もう言い尽くされていますが、
技術がデジタル化すると製造の難度が下がり
低い労務費の新興国でも製造販売が可能となります。

そこで付加価値の高い、設計や意匠、ユーザビリティを先進国が担当し、
労務費の安い地域で大量に生産して
徹底的にコストを下げるという水平分業が広がりました。

他国で実現できない垂直統合型で一世を風靡した日本の家電メーカーは
ことごとくシェアを奪われる近年の状況です。

ここからは私の意見ですが、
何も日本が水平分業をやっていけない規則はありません。
ただ過去の成功体験のしがらみと
大きな組織の共通意識を急激に変えることが
難しいという事ではないでしょうか。

産業構造はここまで解析されているわけですから、
発想が少しずつ変わっていくと期待します。

その点で、組織が小さくフラットな企業ほど転換がし易いはずです。
新規技術は多様な技術屋が垂直統合して短期間で立ち上げ、
デジタル化で標準になった後は自社の利益を最大化する役割に徹する。
そんな企業が出てくるのではないでしょうか。

海外の文化を柔軟に取り込んで、
自国なりに消化(昇華)するのが得意な日本です。

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もの(製品)の概念の再整理(2013年度版 第1章第3節1)

2013年8月17日ものづくり白書を読み解く

2013年度版ものづくり白書第1章第3節1では、
もの(製品)の概念を再整理しています。

もともとメカの集合体であった自動車ですら
近年は機能の大半をソフトウェアで実現し、
さらにはメカの代表だったブレーキですら、
ソフトウェア(電子)制御になっています。

ましてや小型PCともいえるスマホでは、
ハードはいくつかのデバイスにとどまり、
それらを制御するソフトウェア(アプリ)によって
あらゆる機能が提供されます。

ここに至ると「もの」づくりの概念を再構成する必要が生じます。
「もの」が「物体」ではなく、機能、ベネフィットであるなら
サービスとの違いが曖昧になってきます。

これは改めるまでもなく近年よく言われていることではありますが、
旧来の設計ではまずメカを設計して、電子制御を設計し、
最後のステップでソフトウェアで何とかする(?)
という手順が多いようです。
技術者の序列もこの順でソフトエンジニアは
最下級(?)とか以前は卑下していました。

最近はどうでしょう?
それともあれは私が勤めていた会社だけの話だったでしょうか?

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デジタルとアナログ(2013年度版 第1章2節コラム)

2013年8月10日ものづくり白書を読み解く

2013年度版ものづくり白書第1章2節のP93-94にかけて
「デジタルとアナログ」というコラムが掲載されています。

日本はアナログに強く、デジタルで弱いという
よく言われるパターンの論調です。
ここではさらに、先端アナログ分野も多いので、
ここでしっかりリードしましょうという結論です。

しかし真のアナログ調整分野は手間がかかり
市場が拡大しにくいので、
ここだけに固執するのはいかがなものでしょう?

自然社会はすべてアナログなので、
生まれながらのデジタル技術はありません。
最終的にデジタル動作するLSIも
アナログプロセスであるフォトリソの
ばらつきを考慮しながら設計するはずです。

一旦デジタルになってしまえば
日本人の優位性は少なくなりますが
そこに至るまではアナログなのです。

よく言われるように、DVDやカーナビのデジタルも
初め作ったのは日本人です。
多くの要素技術を短期間に有用な統合技術にまとめあげるのは
やはり共同意識、共通認識の強い日本人向きのプロジェクトでしょう。
そのアドバンテージを活かす戦略のなさが
その後の製品シェア急落の原因です。

インテルやマイクロソフト、クアルコムといった
一旦自分たちが作った技術は
しっかりと長期的に利益を確保する
戦略的活動が素晴らしい。

日本であれば、ファナックでしょうか。

ところで「ものづくり革新ナビ」で紹介している技法群も
言ってみれば暗黙知だったノウハウを
技法という形でフレームワーク化したものと言えます。

日本人は器用なので
そんなフレームがなくても何とかなる場合もあるでしょうが、
デジタル部品の組み合わせの方が
早くロバストに結果を出すことができます。

新興国が習得したらヤバイなあと、
良く思う今日この頃です。

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製品寿命の短期化(2013年度版 第1章第2節3(2))

2013年7月25日ものづくり白書を読み解く

2013年度版ものづくり白書第1章第2節3(2)では
デジタル化・モジュール化による製品寿命の短期化が説明されています。

皆さんご存知のように、
日本の電機業界は大手企業が苦戦しています。
他の製品分野に比べて電気製品は
機能がICの中に設計されてしまうため、
部品さえ購入してしまえば
比較的容易にほどほどの製品が実現できてしまいます。

下の図123-5は企業アンケートの結果ですが、
比較的グローバル競争力があると言われる
自動車、産業用機械に比べて、
電気機械はモデルチェンジの間隔が
極めて短くなっています。

●図123-5 製品の特徴と(※)寿命変化の関係(※次回モデルチェンジまでの平均年数)
製品の特徴と寿命変化の関係_次回モデルチェンジまでの平均年数【技術者のキャリア設計】エンジニア・技術者・専門家・ものづくり・製造業・経営論・人材確保・キャリアアップ・キャリア形成・ものづくり.com

私が学生の頃は
オーディオ製品が1年に2回モデルチェンジしていた時代で、
その厳しい環境で欧米のメーカーを置き去りにしたものです。

今はそのスピードに日本が付いていけなくなっています。
品質工学やプロジェクトマネジメントなどを効果的に使用し、
開発の生産性を向上する必要があります。

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設備投資の促進に向けた支援策(2013年度版 第1章第2節2 コラムP82)

2013年7月15日ものづくり白書を読み解く

2013年度版ものづくり白書第1章第2節2P82のコラムでは、
設備投資の促進に向けた支援策が説明されています。

前節で解説されたように、
国内の設備投資の低迷および旧式化が
日本の競争力を低下させているとい判断で、
政府はH24年度補正予算で
「円高・エネルギー制約対策のための先端設備等
投資促進事業費補助金(予算総額は2,000億円)」を
措置し、605件が採択されました。

これによる補助金は1280億円ですから
使いきれなかったことになります。

内容を精査していないため、
その有効性を確信することはできませんが、
それなりの波及効果が期待されます。

しかし超赤字国家予算の中での政策ですから
将来の税収が相当の確率で見込まれないと
財政破たんへの確実な一歩となります。

収入源への投資は、
無駄な道路建設よりはかなりましであり、
できれば新興国への輸出競争力が向上する
補助金となって欲しいものです。

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設備優位性の低下(2013年度版 第1章第2節2(5))

2013年7月12日ものづくり白書を読み解く

2013年度版ものづくり白書第1章第2節2(5)では、
日本の設備優位性の低下に関して説明しています。

前にも書きましたが、近年の日本製造企業の設備は
国内よりも海外に対してより多く投資されてきています。

図122-24は日米韓の民間設備投資額を比較しています。

●図122-24 各国の民間設備投資の推移
各国の民間設備投資の推移【技術者のキャリア設計】エンジニア・技術者・専門家・ものづくり・製造業・経営論・人材確保・キャリアアップ・キャリア形成・ものづくり.com

90年との比較で、韓国は5倍近く、
米国でも2.37倍となっているの対し
日本は0.72倍で、
山谷もなく、ほぼ一様に下落しています。

2013年度版ものづくり白書をメディアが取り上げた際には、
この部分を最も焦点としていたようで、
だから低迷している、もっと増やそう、
という論調だったように聞こえました。

日経ビジネス最新号でも
日本の優秀な人材が海外に流出しているという記事がありました。

減退していく年齢構造はいかんともしがたいですが、
人材や投資をぐっと引き寄せるような
魅力的な産業/製品を提示したいものです。

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戦略的な特許取得の重要性(2013年度版 第1章2節2(2))

2013年7月9日ものづくり白書を読み解く

2013年度版ものづくり白書第1章2節2(2)では、
戦略的な特許取得の重要性が説明されています。

図122-10を見ると、特許件数を重視している企業よりも
厳選して取得している企業の方が営業利益が増加傾向です。

●図122-10 特許取得戦略と営業利益
特許取得戦略と営業利益【技術者のキャリア設計】エンジニア・技術者・専門家・ものづくり・製造業・経営論・人材確保・キャリアアップ・キャリア形成・ものづくり.com

サンプル数がさほど多くないし、分散も不明なので
有意差の判断がつきかねますが、
多くの企業で特許取得に慎重になっているという話は耳にします。

●図122-11 技術伝播の影響が強い経路
技術伝播の影響が強い経路【技術者のキャリア設計】エンジニア・技術者・専門家・ものづくり・製造業・経営論・人材確保・キャリアアップ・キャリア形成・ものづくり.com

図122-11のように、
特許を通じて自社技術が外部に流出するため、
必要な特許のみ注意して出願することが
一般的になってきています。

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企業競争力の源泉である「技術・設備の維持・強化」(2013年度版 第1章2節2)

2013年7月7日ものづくり白書を読み解く

2013年度版ものづくり白書第1章2節2では、
企業競争力の源泉である「技術・設備の維持・強化」について解説しています。

前段のアンケート、で技術力に相当の自信を持っており、
事業競争力でも欧米韓国には互角以上の意識を持ちながらも
中国企業に対しては劣位と感じています。

その一つの要因と分析しているのが研究開発費です。
日本企業のGDP比研究開発費は
2001年のから1.4%から、2008年には2.8%まで増加しましたが、
2009年に下がり韓国に抜かれています。

また図122-4で分かるように、絶対額の指数では
日本の伸びに比較して中韓が飛躍的に増額していることが分かります。

●図122-4 企業部門の研究開発費の推移
企業部門の研究開発費の推移【技術者のキャリア設計】エンジニア・技術者・専門家・ものづくり・製造業・経営論・人材確保・キャリアアップ・キャリア形成・ものづくり.com

研究開発費が伸び悩んでいるだけでなく、
図122-7で分かるように
研究開発の期間も短期的なテーマが増えてきており、
長期的な競争優位性に不安があります。

●図122-7 研究開発期間の変化
研究開発期間の変化【技術者のキャリア設計】エンジニア・技術者・専門家・ものづくり・製造業・経営論・人材確保・キャリアアップ・キャリア形成・ものづくり.com

ひとつには人口減少局面に入り、
以前出てきた設備投資と同様に
市場収縮方向の国内よりも海外向けの研究開発が増えるのは、
理解せざるを得ないでしょう。

しかし、付加価値の源泉である開発が国内で減少し
短期的になっている電気機器業界は
これからかなり厳しい戦いになっていく危険性があります。

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TPPなどの経済連携を活用した立地環境の改善(2013年度版 第1章第2節コラム)

2013年6月27日ものづくり白書を読み解く

2013年度版ものづくり白書第1章第2節のコラムでは、
TPP周辺の環境と重要性が書かれています。

ご存知のように、本件では賛否両論が行き交っていますが、
この白書は経産省なので、完全に賛成の論調です。

一般的に新しいことを始める時は、
賛成が多くとも、既得権者が死に物狂いで反対するため
そちらがメディアに取り上げられ、
あたかも賛否相半ばのように見えたりします。
賛成者は死に物狂いになりにくいため、
ニュースの「絵」にならないのです。

しかも反対している人は、農業従事者よりも
その利権の恩恵を受けている人だったりします。

いずれ中国の食文化が豊かになり、農作物が不足し
日本などからの輸入に頼らざるを得なくなるという話も聞きます。

保護に頼るのではなく、自らの知恵を使って
農業の付加価値生産性向上を今から進め、
来たるべき農業輸出時代に備えるべきでしょう。

製造業で培った生産性向上の手法も
間違いなく利用できるはずです。
いや、利用しなければなりません。
ものづくり革新ナビを農業関係者も見て欲しいな。

TPPをそのための契機として利用してほしいものです。
もちろんソフトランディングのための施策は必須です。

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